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【完全公開!!】軸が定まり人が集まる理念のつくり方(1)はじめに&理念とは

目次

この記事が目指すもの

こんにちは、「挑戦者の翻訳者」として事業家のあふれる想いを、理念・社名・商品名などのコピーライティングしている大野幸子(@rinengirl)です。

今日は、みなさんに「理念のつくり方」をお伝えさせていただきます。この内容は、私がこれまで2時間の対面のセミナーで40回近く開催してきた「軸が定まり人が集まる理念のつくり方」セミナーを、より詳しく解説してお伝えするもの。実際にお伝えしてきた中で反応の良かったものや、いただいた質問の内容を踏まえ、ぜひわかりやすい記事にしたいと思っています。

この記事は、「理念って一体何?」という方から「既に理念はあるけど、もう一度つくり直してみたい」という方まで幅広く対応できる内容になっています。また、このセミナーには経営コンサルや税理士さんの参加も多く、「クライアントに対して理念のつくり方を体系的に伝えたい」というニーズにも応えてきました。幅広いニーズにご満足いただいてきた内容ですので、理念にまつわるあらゆるレベルの方に、何かしらお渡しできると思います。

ただし、対象とする規模としてはフリーランス・一人社長〜中小企業(最大300名くらい)のオーナー社長向けとなります。また独立・起業していなくても、これから何かをやっていきたい個人の方にも有効な内容です。大企業だったりオーナー社長ではないと、この記事に書いてあることとは違う論理がはたらくのでここでは対象から除外します。(オーナー社長であれば、2代目3代目の社長も当てはまります)

なお、この記事のゴールとして、以下を掲げています(これは、これまでのセミナーでも目指していたゴールです)。

「使える理念」とは何かを理解し、
まずは自分一人でつくれるようになる

このゴールについて、少し説明を加えます。

①「使える理念」とは何かを理解する

理念とは決して「壁にかけて終わり」のものではなく、戦略・営業・提携・採用・教育といった、経営のあらゆるシーンで使える最強のビジネスツールだと思っています。だけど今はまだ、そのポテンシャルをいかし切れている理念が圧倒的に少ないと感じています。この記事では、理念の持つ有用性や可能性について存分にお伝えし、理解を深めていただきたいと思っています。

【 参考 】上質な理念を持つ理由

② まずは自分一人で理念のたたき台をつくれるようになる

もちろん、この記事を読んで完璧な理念ができた!という方は大歓迎なのですが、私の持論として、「理念は人と一緒にブラッシュアップしていくもの」というものがあります。理念づくりは、いろんな意味で簡単ではありません。理念づくりの難しさの一つに「自分の当たり前を疑う」というものがあります。自分では当たり前と思っているものが実は当たり前でなかったり、そこにすごい宝物が隠されていたり。多くの人の目に触れるものだからこそ、早い段階で人の目に触れ、客観性を担保しながらつくることが大事だと思っています。

しかし理念の前提となる「想い」は、非常にやわらかでまだふわふわしていることがほとんど。その状態で人に相談すると、「それよりもどうやって稼ぐんだ?」「そのビジネスモデルではやっていけない」と指摘され、”しゅん”としてしまう方は少なくありません。そういうことにならないように、まずは自分一人でたたき台をつくり、良質なフィードバックをもらえるところまで持っていく。それがこの記事が目指すゴールです。

そもそもなぜ今理念なのか

私自身は大きく以下の2軸で経営者のみならず、今を生きる全ての人に理念が必要だと感じています。

①「機能検索」から「人検索」の時代へ

昨今のビジネスでは、モノの性能やビジネスモデルで差別化することがどんどん難しくなっています。変化や革新の速度がどんどん早くなる現代において、モノやサービスはすぐにコモディティ化し、魅力を失います。それを追いかけるのも一つの醍醐味ではありますが、常に新しい何かを市場に投入し続けていく必要があります。その点、ひとの想いによる差別化はどうでしょう。少々キザなことを言いますが、世界中であなたという人間は一人しかいません。そのあなたの想いも、あなた独自のもの。自身の想いを本人が自覚し、それを適切な形で世に出せたとすれば、一度ついたファンは「あなただから」「この会社だから」ということでものを買ってくれます。そのブランドは時間をかければかけるほど蓄積され、価格ではない「指名買い」となり、また「リピート買い」にもつながっていく。その「人検索」の根底でありまた牽引するものこそ、私は「理念」だと思っています。

②一億総迷子時代の軸として

私たちの就業スタイルの自由度は、どんどん増して行っています。起業、週末起業、副業、パラレルワーク 早期退職 etc…
ミヒャエル・エンデの言った「自由からの逃走」よろしく、私たちは自分の前に提示される選択肢の多さ、可能性の海の前でおぼれかけてはいないでしょうか。「自分には何が合っていて、どんな選択をしていけば良いのか」。

経営者にとって一番辛ことは「自分を信じられないこと」だと私は思っています。誰も正解を知らないこの時代で最終的に頼れるのはこの自分。その自分が揺らいでしまうことの恐怖たるや計り知れません。
起業や経営していなくても、私たちは自分の人生のオーナー。自分の軸が分からずに悩むことは誰にでも起こり得る恐怖。その時に頼りになるのもまた自分自身の軸ではないでしょうか。
一億総迷子時代の今日が一億総理念時代になるべく、この記事が「自分理念」づくりのお役に立てればと思っています。

簡単な自己紹介

理念について偉そうに語るおまえは一体誰なんだ。というご意見もあるかと思います。詳しくはこちらの自己紹介記事に譲りますが、この2年で60社近くの理念をつくってきました。30歳までのキャリアの半分は法人営業。そこから半分は経営層のチームビルディングやビジネスリーダー向け対話術セミナーのマネジメントというキャリアです。その後半のキャリアと並行しつつ、持ち前の言語化能力と、現場で培った引き出す力(質問力)を生かし、経営者と1対1で理念をつくる仕事をしています。
「社長を幸せにする理念」がモットーで、誰よりも頑張っている経営者(=挑戦者)が自分の内側からのエネルギーで挑戦し続けられる理念づくりに力を入れています。

今の時代にはない新しい概念やサービスの普及・浸透を目指す挑戦者の話を聞き、その方のエッジ(いい意味でのとがり)を持ちながら、人々に届く言葉とは何か。それを見つけ出して言葉にすることが私自身の挑戦であると同時に「挑戦者の翻訳者」と名乗っている由縁です。

本編スタート!

さぁ、前置きが長くなってしまい失礼いたしました。(もはや、本でも書きそうな勢いですね。普段話していることを言葉にするって大変!)ここからは、実際の理念のつくり方に入っていきます。この記事は、大きく以下の3つのパートからなっています。

① 理念とは何か

② 理念をつくる効果

③ 理念のつくり方

まずは、つかみどころのない「理念とは何か」をお伝えした後に、実際に「理念をつくる効果」についてお伝えします。この効果を満たしている理念=良い理念だと思いますので、つくった際のチェックリストとしても使ってください。そしてここまでお伝えして最後が、「理念のつくり方」となっています。
では早速スタートしていきましょう!!

① 理念とは何か?

まずはじめにみなさんに質問をさせてください。理念をなんと説明(定義)しますか?

理念の定義?


こういった質問を投げかけると、こんな回答をいただきます。

・迷ったときに指針となるもの
・どこにいても見える北極星
・会社の存在意義 etc…

また「理念」について、Yahoo!やGoogleなどで検索したことはありますでしょうか?検索すると、こんな言葉がいっぱい出てくるんですね。

「理念」と調べると、「判断基準」や「バリュー」という言葉が出てくる。
「バリュー」とは何かを調べると、今度は「クレド」という言葉が出てくる。
じゃあ「クレド」とは何だろうと調べると…と言った具合で、どんどん理念から離れていくこともしばしば。
いろんな会社の理念を参考にしてみても、短いものもあればすごく長いものも。会社によって、行動指針のようなものを理念と呼んでいたり、ただかっこいいだけのキャッチコピーが並んでいたり…と、調べれば調べるほど分からなくなるのが理念のやっかいなところ。「検索の森を抜け出せない」感じになっちゃうんですね。じゃあ、私の思う定義は何かと言うと、

定義は・・・しません!!

もちろん私なりに、一応以下の2点を定義としてパンフレットに書いていたりはします。

【 参考 】ココロイキの考える理念の定義

・言語化することでより強くなる事業や組織の軸
・経営の価値判断の基準となる根本的な考え方

だけど、そんなことより大事なことが理念にはあると思っています。それは何か?

その理念は「仕事」をしているか?

ということです。最強のビジネスツールである理念は、定義うんぬんを脇におき、「経営に使える言葉」になっているかどうか、の方がよっぽど大事だと思っています。

そして、仕事をしているかどうかを判断する上で大事になってくるのが以下2点だと思っています。

見るたびにグッとくるか

差別化要因になっているか

見るたびにグッとくるか

すごく抽象的な表現で恐縮なのですが、私はここに尽きると思っています。まずはそれを掲げている本人がグッとくるかどうか。果たして本人の心が動かない、一体誰の心に響くのでしょうか。
理念を見るたびに「そうだ、このために自分はやっているんだ、生きているんだ」と思えるものを理念に掲げ、見るたびに、人に話すたびにグッとくるような理念を、ぜひ持とうではないですか。これが私からお伝えしたい強いメッセージです。

差別化要因になっているか

これは、マトリックスをつくってどこが自社の戦える場所か考える、そんな話ではありません。また、確かに他社では見たことのないような表現があれば差別化につながりますが、そんな小手先の話でもありません。
ここでお伝えしたいのは、「ちゃんと自分の内面を深掘り、核を言葉にできていますか?」ということ。

言葉にするときには、「何」を「どう」表現するのかという2つがあります。みなさんは、理念やあるいは何か言葉をつくるときに、「どう」表現するかというテクニックの問題だと思ってらっしゃいますが、「どう」よりも先に大事なのは「何」を言葉にするか、です。理念づくりは、この「何」さえ見つかってしまえば、8割方終わったようなもの。その「何」さえ分かれば、正直伝える言葉なんて洗練されてなくっても構わないし、どんな言葉でも「伝わる」言葉に変化します。それくらい「何」を見つけることが難しく、また重要です。
その「何」はその人、会社オリジナルなものなので、それさえ表現できれば、差別化されるはずですよね。というのがお伝えしたいこと。ここにこそ「ひと検索」される要があると思っています。

さぁ、ここまでだけでも、結構情報もりもりだと思います。
これからは理念が大事なこと、その理念は定義よりも、仕事をしているかどうかの方が大事なこと。ここまでで一旦、大事なことはお伝えしたので、ここで一息を入れましょう。小休止がてら、私からクイズを出題してみます。

「これは理念?」クイズ

今からいくつか言葉をお見せしますので、これは理念かどうかを考えてみてください。まずはこちら。

こういうのが毛筆で書かれた額縁ってイメージできますよね?果たしてこれは理念でしょうか?じゃあ、もう一つくらい行ってみましょう。こちらはいかがでしょうか?

さぁ、どうでしょう?シンキングタイムです・・・ファイナルアンサー??(古)

正解は・・・

どっちでもあり!

です。

みなさん、ここで思い出してください。私は、理念の定義はしなかったですが、その代わりに、「その理念は仕事をしているか?」という基準をお渡しさせていただきましたよね。この「誠実」とか「社員第一」とい言葉がその方にとってグッときて、自分の内面を深掘りしてきた言葉だったら、理念だと言えます。言葉のうまさ、ありきたりな言葉だから。ということは関係ありません。例えば、「社員第一」という理念を掲げている会社があったとして、その背景にこんなストーリーがあったとしたらどうですか?

その会社の社長には、ある想いがありました。「お勤めしていた時代に感じた働くことへの理不尽を解消したい」。働いたことがもっと正当に評価されて給与に反映されるべきだし、人はもっと自由にやりたいことを選択できるべきだ。

そんな職場環境を用意し、ひいてはそんな社会をつくって行く側になりたくって、彼は起業しました。正直、職種や業界はなんでも良かった。ただ、働いた人が正当に報われ、仕事以外の時間も十分に確保できる、そんな業種はないだろうか。そんな想いから事業領域の選択をし、起業しました。起業した後も、彼は「どうやったら社員を幸せにできるか」そんなことしか考えていません。

これは、実は理念をつくらせていただいたお客様のほぼ実話だったりします。理念自体は「社員第一」という言葉にはなりませんでしたが、この要素を大きく取り入れ、それを社会的意義にまで昇華した理念にいたしました。

大事なのは理念に込められた想いや背景情報で、言葉だけを見て、理念にふさわしいかどうかを判断することはできないということです。一見すると「社員第一」という概念は、お客様をないがしろにしている気がして聞こえがよくないかもしれません。しかし、それが自分自身のこれまでや価値観を深掘りして出てきた要素だとすれば、それは理念です。

という大事なメッセージをお伝えしつつも、ここに掲げた「誠実・信頼・感謝」や、「社員第一」というのは、あまり理念には向かないかもしれません。「では理念とは何か?」については後述するとして、今あげたものは「行動指針に近い」かもしれません。それだと日々の行動の基準になったとはしても、もっと大きな決断(新規事業の選択や事業提携など)には用をなさない可能性があります。

さて、もう1クイズ行ってみましょう!こちらです。

なんの会社の言葉かを当てるクイズではありません (笑) が、これは日立です。

続いてこんな言葉はいかがでしょう?

もう一度言いますが、なんの会社の言葉かを当てるクイズではありません(笑)が、これは資生堂ですね。これは理念と言えますか?

最後にこんな会社も。

ご存知ロッテですね。これは理念と言えるでしょうか・・・?

クイズにお付き合いいただき、ありがとうございました。解答は、これも、

どっちでもあり!

です。

しつこいようですが、これがグッときて、しっかりと深掘りされたものであり、目的にかなう言葉であれば、これは理念です。文字の長さとか、言葉のテクニックとか、そんなものが評価基準ではありません。ので、ここに掲げたような言葉を「うちの理念です」あるいは「うちのビジョンです」みたいな感じで掲げても、全く問題ありません。

ただもしかして、多少の違和感があるかもしれないですね。ここで挙げた3つは理念というよりも、「コーポレートメッセージ」あるいは「スローガン」と表現されるものに近そうです。(少し専門的な言い方をすると「タグライン」といって、より普遍的に企業やブランドの価値を伝えるキャッチコピーの部類に入ります)

実際ここに挙げた日立、資生堂、ロッテのHPに行くと、これらの言葉とは別に理念が記載されています。ちなみに、日立の掲げる理念やビジョンは以下の通りです。

【 日立グループ企業理念 】

優れた自社技術・自社製品を通じて社会に貢献する


【 日立グループビジョン 】

日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界を目指します。

うん、大企業らしい理念や、ビジョンが別でありますね。ということは、今回のクイズで掲げたものは、私の捉え方からすると理念としても良いけども、これらの企業たちは、これらの言葉とは別に、理念やビジョンを掲げている、ということになります。

と、ここまで書き進めてきましたが、できっとみなさんモヤモヤしていますよね?「じゃあ結局、理念とはなんなんだ?」と。そのモヤモヤを解消するために、次の重要なことをお伝えしたいと思います。

「理念の構成要素」を理解する

みなさん、お待たせしました!やっと、理念をつくることにすごく近い事項の登場です。これまで定義の代わりに「その理念は仕事をしているか?」という大事な基準をお伝えし、クイズに答える中でちょっと混乱?していただきました。

ここでは、「理念」というなんとも掴みどころがない概念を「構成要素という観点から分解」して考えてみたいと思います。私は、理念を以下の4つに分解して考えるようにお伝えしています。

私の理念づくりでは、各要素をできるだけ質問形式で書くようにしています。もちろん、個別で理念をつくる際には、これとは別に膨大な量の質問・ヒアリングをしていますが、核となる要素はこれらの4つになります。一つずつ解説を加えますね。

要素①:想い

・どうしてその仕事を始めたのか
・どうしてその仕事を続けているのか

この質問は、簡単に見えて実はすごいパワフルクエッションです。日々の目の前のことに忙殺され、全然意識しなくなってしまっている原点を思い出させてくれる、大事な質問です。これに答えただけで、「自分が理念をつくることで解決したいと思っていた課題が解決した」という方もいらっしゃる要素です。

みなさん、すっかり当たり前になっているかもしれないし、流れの中で必然だった。とお考えかもしれませんが、実際には数千もの選択肢の中から、その仕事自分の意志で選んでいます。その選択は決して当たり前のものではなかったし、選択した中には意図があります。だって、インドのカースト制度がある訳じゃあるまいし、日本には「職業選択の自由」がある訳ですから。「なぜその仕事を選んだのか?」ぜひここで足を止めて考えてみてください。

そしてもう1問、「どうしてその仕事を続けているのですか?」
みなさんの仕事は「いつ辞めたってよい」自由なものです。いろいろな事情をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、究極いつ辞めたって個人の自由です。
その仕事を始めたのは、成り行きだったりたまたまだったかもしれない。だけど、続けているのには何か理由があるはずです。それは別に、「こういう社会貢献のため」なんかじゃなくなっていい。「こういう風に喜んでもらえるのが嬉しい」とか、あるいは「効率的に稼げて、別のことに時間を使えるから」とか、どんなレベルであってもいい。
ここで、変なかっこつけはやめて、自分の心に素直になり、社会貢献みたいなたいそうなレベルから、「単なる個人の趣味」みたいな卑近に見えるレベルまで、たくさん出してみることです。
その結果、建前じゃないレベルで、自分の本心に近いような欲求が出てきます。理念づくりのスタートの始まりは、意外とこんな至極利己的な要素。から入った方がうまくいきます。いきなり「社会のため、お客様のため、従業員のため」みたいな自分不在の要素から入ると失敗します。たとえこれで理念をつくったとしても、よそよそしく、誰の心にも響かない残念な理念ができあがります。

この段階で出てくるものは、誰にも見せないものな訳ですから、ぜひ誰に遠慮するわけでもなく、自分の想いや考え、価値観をさらけ出してみてください。

ちなみに余談ですが、私のこの崇高に見える「理念づくり」という仕事の始まりも、たまたまでした。
私が主宰しているココロイキ は、理念として「挑戦者に言葉を」というものを掲げ、ビジョンとして「ココロでイキる世界へ」というものを掲げています。挑戦者と言葉をつくる中で、軸が定まり、自分の価値観が明らかになる。その信念に沿って自分の心に正直に生きることを「心で生きる」と表現し、その挑戦者のエネルギーが世界に広がり伝播していく中で「心で生きる」世界をつくっていく。

このようなたいそうな想いを掲げている訳ですが、スタートは知り合いからの一言。やりたいことが分からず、10年単位で人生にモヤモヤ・迷走していた私は、「これは仕事になるかも!」みたいな自分の利益からこの仕事をスタートしました。

実際にやってみたら、すごく面白くて楽しくて、しかも人に役に立ててしまった訳ですが、「どうして続けているのか?」それはつまるところ人のためではなく、私のためです。活動を続ける中で、私には「人生の美しさを表現し尽くしたい」という欲求があることに気づいていきました。その最高に美しいものの一つとして人が人生をかけて何かを成したいという想いがあり、私はそれを表現できる素晴らしい機会の一つとして、理念をつくっています。

余談ついでに白状すると、私が理念づくりをしていて最高に好きな瞬間は、お客様が喜んでくださることは二の次で、「家で理念をつくっていて最高の言葉が見つかったとき」が私的最高のクライマックス!

私にとって理念は「お客様の肖像画を言葉で表現」したもの。最近深く自覚したのですが、私自身はコンサルという立場ではなく「表現者」。その表現が楽しくてやっていたら、人の役に立っている。そんな順番だったりします・・・。

ついつい余談が長くなってしまいました(汗)が、これは実は非常に重要なこと。世の中に出ている理念は、その辺りの利己的な欲求を隠してお化粧した状態で世の中に出てきているので、つくる時の参考にならないんですよね。その辺りの憤りをインタビューメディアという形で昇華させたのが「挑戦者のココロイキ」という媒体ですので、ご興味ある方はぜひこちらのnoteを読んでみてください。

っと、非常に重要なところだと思いつつ、ついつい想いがこみあげてきて長く書いてしまいました。(まだ、要素①の説明しか終わっていない・・・)続けますね!!

要素②:社会性

出た!社会性!!
こんなことを最初から考えようとするから、理念づくりが難しいのですよ。そんなね、社会貢献なんてね、知ったこっちゃないですよ!!

って、理念づくりをしている私がこんな論調ですみません。。。(笑)
けど、「社会性は何?」とか「それにはどんな意義があるの?」なんてたいそうなこと、特に最初のうちは分からないし、続ける中で芽生えてくるものでもあると思うんですよね。だから、変わっていくことは前提で、まずは等身大で考えていくことが重要だと思っています。社会性に関連する質問は以下の通りです。

・最終的にどのような社会を実現したいのか
・あなたがいないと、社会はどうなるのか
・あなたが売っているものは何なのか

一つ目の「最終的にどのような社会を実現したいのか」については、質問というよりは、定義みたいなものですね。これを最初から答えられるなら苦労はしません。それが既にある方は、「なぜそれをやりたいと思っているのか」という「想い」の部分のストーリーをしっかり話せるようになっていきましょう。

ヒントになるのは、残り二つの質問です。

「あなたがいないと、社会はどうなるのか」
いやはや、違いがあって欲しいですよね、せっかく行動して何かを成そうとしているんですから!きっと、あなたが行動することで、何かしらの差が社会に生まれるはずです。それがあなただったり、あなたの事業が持つ価値だと言えます。

「あなたが売っているものは何なのか」
この質問も非常に大事な問いかけです。「これを回答するだけで理念ができてしまう」可能性を大いに秘めた質問なのです。

どういうことか?
例えば、ウォーターサーバー業を営んでいる方がいたとして「あなたが売っているものはなんですか?」と問われたとしましょう。
その際、以下の回答があったとします。

・私が売っているものは水です
・私が売っているものは家族の健康です
・私が売っているものはお母さんの笑顔です(「ミルクづくりが楽になる」など)

この3つの回答はどれも正解ですし、他の答えでも「本人が何と認識しているのか」という問題だけですので、これ以外の回答も正解です。大事なのは、「自身の事業の価値を何と定義しているのか」ということです。

一つ事例を出しますが、以前私のセミナーに、モテない男性専門の恋愛力養成スクールの塾長が参加くださったことがありました。

その彼に、「あなたが売っているものはなんですか?」と聞いたところ、彼はとっさに「幸せへのパスポートです」と回答。周囲の参加者からも「お〜っ!」という声が上がりました。これにもう少し言葉を足して形を整えたら、理念になりそうじゃないですか?(笑)

「社会性」という言葉だけで考えると出てくるものも出てこない感じがしますが、要するに社会に対して何を渡しているの?というお話。
「何を売っているのか?」という質問に対して、少しとんちを利かせて答えてみてください。きっと、大事な要素や概念が出てくると思います。

要素③:対象

・社会性を実現するために、何に価値を提供するのか
・あなたが本当に力になりた人や変えたい事象は何なのか

「対象」を定義すると、先に挙げた「社会性」を実現するために何(事柄・課題)/誰 に価値を提供するのか、ということになります。が、少し堅苦しいですよね。もう少し噛みくだいてお伝えすると、「純粋に力になりたい人、変えたいと思うこと」はなんですか?というお話です。
もちろん、対象ってなったときに日本!世界!人類!みたいなビジョンをお持ちの方がいらっしゃると思います。また、戦略的にこの対象や事項から。という事情もあると思います。
だけど、一旦そういう大きな話は脇において、「そもそもなんでこの事業をしたいと思ったのか」、「それを思い出したときにいる人、あったことは何なのか」ということに想いをはせてみてください。

私の持論の一つに、「想いがあって行動を起こした人の最初のお客様は、過去の自分」というものがあります。理念をつくる中で、「なぜそれをやるのか?」を深掘りしていったところ自分の過去の体験(原体験)があり、実は過去の自分と同じ状況にある人の力になりたくて行動している、というお話は本当によくあること。みなさんもぜひ、そういった可能性も含めてこの質問に答えてみてくださいね。

要素④:手段

社会性を実現するたにどのようなアプローチをとるのか
・どんな関わり方をしている時が楽しいか、好きなのか

要素の最後は「手段」です。実は、この手段が、一番個性が表れるところでもあります。究極言えばみなさんが目指している社会性は「人々の幸せ」であり「世界平和」みたいなところに集約されていくと思うのですが、そこに至るアプローチが異なります。

例えば「貧困をなくす」という社会性があったとしても、そのために ①政治家になる ②NPOを立ち上げる ③技術革新で、食糧革命を推進する など、アプローチは様々です。よって、何によって社会性を実現しますか?というシンプルな質問。

もう少し平たく質問をさせていただくと「どんな関わり方をするのが好きですか?」というものでもあります。

例えば、目の前の人に喜んでもらうのが好きなのか、そんなことはさておき数万単位で影響を与えたいのか。長く関わりたいのか、瞬間的に関わりたいのか、などです。
実際に言葉になるのは、もう少し具体的な「栄養価の高い食糧の供給で」とか、「政治に立ち向かう力で」などの言葉になるかと思いますが、この段階で「自分はどんな関わり方が好きか」を考えておくことは、あとあと重要になります。
この辺りの知見は、私の中で「職人社長とビジョン社長の違い」という分け方で説明がつきますので、これについてまた記事を書いた際にはお伝えさせていただきますね。

構成要素の実例

さぁ、ここまでで既に軽く1万字を超えてしまいました(大作になる予感しかしてなかったけど、やっと1/3くらい・・・)。
この理念のつくり方(1)の記事では、最後実際の理念をお見せし、構成要素というのを確認してから、次に進みたいと思います。

ご紹介するのは、ベンチャー企業の支援に特化した、ある弁護士事務所の理念です。

イノベーションを起こそうとしている起業家と硬いタッグを組み、ベンチャーこそ活きる環境を法律面から作り出すことで、より便利でより豊かな社会の到来を加速させます

実はこの理念は、私がお金をいただいて初めてつくったもの。同時に、一番長い理念でもあります(既に「 Innovation with low」という言葉があったので、その意味を翻訳した形なので、長めになっています)

さて、この理念の中で、「想い」「社会性」「対象」「手段」はそれぞれ何になりますか?

おそらく

社会性:より便利でより豊かな社会の到来を加速させます
対象:イノベーションを起こそうとしている起業家
手段:ベンチャーこそ活きる環境を法律面から作り出すことで

という構成要素になっていると言えると思います。参考になりますでしょうか?

ここで人によって「あれ?」となる方もいらっしゃるかと思います。「想い」はどこだろう?と。

結論から言うと、「想い」が理念の中に言葉として入ることはありません。言葉として顕在化するというよりは、全体に流れるイメージ、と言っても良いでしょうか。理念を考えるときには「想い」を考えることは非常に重要になってきますが、「私は過去にこういう経験をした」とか「●●という理由で」ということが入っている理念って見たことないですよね?(もちろん、理念の説明文に書いてあることはあります)
詳しくは、理念のつくり方(3)でお伝えしますが、構成要素の理解を深めていただけましたら幸いです。

その他、こちらのリンクから、私が過去につくった理念の事例をご覧いただけます。文字の長さや形にとらわれず、目的に応じていろんな理念があっていいんだなということを感じ、理解を深めてみてください。
私の理念は短いものが多いのですが、言葉の削り方についても理念のつくり方(3)でお伝えさせていただきます。

次の理念のつくり方(2)では、「理念をつくる効果」について改めてお伝えします。この「効果」は同時に「使える理念になっているか?」ということに関するチェックリストになりますし、また理念をつくる際にぜひ頭に入れておいた方が良い項目になります。まだまだ先は長いですが、企業や個人の軸になる理念です、そう簡単にポンとできるものではありません・・・。
それでも、迷走している方が非常に多い分野なので、少しでも近道できるよう、お伝えさせていただくつもりです。どうぞ引き続きお付き合いください。

次のページ >> 軸が定まり人が集まる理念の作り方(2)

こちらの個別相談では、理念づくりのお悩みに対して、オーダーメイドでお答えさせていただきます。記事はまだまだ続きますが、ご興味ある方は、ご覧ください。

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筆者プロフィール

大野 幸子(おおの ゆきこ)
ココロイキ 代表 / 挑戦者の翻訳者

理念コピーライター。「挑戦者の翻訳者」 として、事業家のあふれる想いを、理念・ビジョン / 社名 / 商品名として言語化。 言葉で軸を定めるプロ。2年で58社の制作実績。「 人生の美しいものを表現し尽くす」をミッションとし、人が事業にかける想い=理念は人生における最も美しいものの一つとして、尊敬を胸に表現し続けている。

生きる意味を深掘りするインタビューメディア「挑戦者のココロイキ 」編集長

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